妻への贈り物
次男の嫁のスポーツカーを見た妻は、その格好の良さに度肝を抜かれた。
そうこうしているうちに、金がないから売ったとか聞いていたのに、又々、恰好の良い黒のアメ車、「ハマー」である。妻は更に驚き、卒倒するばかりに気に入った。
これまで全く車に興味を示さなかった御方が正に豹変した。出掛ける都度、駐車場の車を見て歩く。
車上狙いと間違われるから止めろと言うのにである。車名を次々と覚え、あれが格好良いとか、悪いとか、一人でブツブツ言っているのである。
そうこうしているうちに半年ばかりが過ぎた。そこへある日のニュースである。日産から、何と自動走行車が販売されるというのだ。それを知った妻は、
「あの車が良い。あの車が欲しい。」と言うのだ。
「運転免許証を返すのではなかった。一年早かった。」
と可哀そうな程後悔している。
「む・・・待てよ」
結婚前に免許を取得し、一瞬、車に乗ったと聞いているが、何十年も運転して来ていないではないか。
昔は中央線を越えて対向車が突っ込んで来るようで恐かったのだという。
「今度は私が運転するのではなく、自動運転だから大丈夫よ。」
と張り切っている。
結婚して何十年、今まで何も買ってやった記憶がない。
いや寝巻ぐらいあるか。
愛する妻にせめて一生に一度、望む物を、古家を売ってでも買ってやりたいではないか。
無免許でも大丈夫でしょうか。
日産自動車様
ちなみに、私は日産自動車OB。
運転免許を取得したこともなければ、車を欲しいと思ったこともない。
