デフレ脱却
アベノミクス景気とか、株価は低迷時に比して二倍近くまで上昇した。大卒の採用も若干ながら増加したそうだ。この波に乗り、ぜひデフレ脱却を定着させて欲しいものだ。
随分と古い話になるが、昭和39年の東京オリンピックに始まる高度経済成長期を経て、日本は有史以来の好景気、即ち、バブル期を迎えることになった。
周知の通り、狭い日本には人口密度が高いが故の土地信仰があった。土地さえ買っておけば何とかなる、土地は値上がりする、と、兎に角、土地土地なのである。資産家はこぞって土地を買い求めた。否、一般庶民も小さな地面を求めた。小さな家や小さなマンションをであった。わが杣家は、たまたまバブルに入る少し前に買い求めていたが、猫も杓子も踊らされ、日本人一億総財テク化の時代であった。
話は突然飛ぶのだが、この夏に訪れた中国にも日本と似たような事態が起きていた。
オリンピック以来の好景気に始まり、まさにバブル期を迎えていた。大都会・上海や北京の摩天楼の辺りの一区画に、市民は競うようにしてマンションを購入しているというのだ。
話を日本に戻す。
そうして何年かを経て、日本ではバブルが弾けた。株価の暴落であり、地価の下落であった。言うまでもないが、土地を沢山買い求めていた人程、痛手を蒙った。上昇も下落も日本の国が初めて経験することであったが、今もって不思議に思われることには、銀行員や証券マンなどのお金を取り扱う専門家が前述のような土地の購入者の財テクに走り失敗していたという。経済の先行きが見えなかったのであろうか、結果として、一家離散の憂き目を見た人も何人かいると、人の噂に聞いたことがある。
そうやって住処を去って行った人がこの街にもおり、親しくしていた人でもあり、私は寂しく、また複雑な気持ちで、最近のアベノミクス景気の折に触れて思いだされるのである。勿論、その人の現在の住所など知る由もないが、よしんば番号が分かったからと言って、電話をかけたりしては、却って失礼になりかねない。
アベノミクス景気が過去のバブル期のように一時的なものに終わらず、永続して欲しい。来年度四月からの消費税をはじめとして、医療費や相続税などなどのアップを、全く気にしないでいられるような経済成長、つまりはGDPの向上が実現して、最終的には、国民一人一人の懐具合が良く潤って来る世の中になって欲しい、と心から願うばかりである。
