明日がある
柚子をご近所から沢山戴いた。有難いことである。何と言っても香りが良い。これからの寒夜、鍋物に風呂に活躍してくれそうだ。
今夜は早速三個ばかり入れ、柚子湯といこう。本を持って一時間程温めの風呂に入るのが日々の楽しみの一つである。これが就寝前の大きな儀式であり、寛ぎになっている。
さて、楽しみの時間が来て、浴槽に足を入れ、全身を沈めること一、二分、何かピリピリする。何かがおかしい「???」
柚子が見えないのだ。いや、良く見ると小さく割れていたのであった。
何せ入ったばかりなので、寒くて上るに上れない。
今度はピリピリを通り越し、全身ビリビリして来るのだ。遂に五分と持たず、読書どころの騒ぎではなく、悲鳴を上げんばかりに風呂から上る結果となってしまった。
犯人は先に入浴した夫であると賢明な私は即刻に判断を下した。(夫と二人暮らし)
夫は私と逆に43度の湯にカラスの行水をするのが好みではあるが、カラスとは言え、一寸の時間があったのだろう。柚子を毀して遊ぶ程の時間があって、その後すぐに湯舟から上ればピリピリもビリビリもない。
楽しみを奪われた私は、かんかんに怒り、夫に一言も、二言も言ってやろうと思って寝室に入ると夫は既に天下泰平、大の字になり、大鼾をかいて眠っていた。
柚子湯の楽しみも読書の楽しみも失われ、一人悲しくベッドに潜った。
数分後「待てよ」と、ふと私は気が付いたのだ。蒲団をガバッと持ち上げ、明日があるではないか。まだまだ柚子が沢山ある。
今度は袋に一個入れよう。
