夫と私のノーベル賞
私は、今日あったことを、小さなことでも何でも夫に話をしたがる性格を持っている。
「今日、こんな本読んだけど、貴方、読んだ?どう思う?」
「ジムに行ったんだけど、エアロビックスだけで疲れて帰って来た」
「〇〇さんの御主人ハンサムだって」
「公園で可愛い猫に逢い撫でたら、ついて来た。私って猫に好かれるんだ」
「歯医者さんに行って来たけど、噛み合せがやっぱり悪いわ」
とまあ、大体こんな具合に様々な話である。
夫にとってはどれもこれもどうでも良い話らしいが、私にとっては、それぞれに全部が大事な話なのである。「今日、友達と食べた昼食が美味しかったから、来週の日曜日、一緒に食べに行ってみよう」という話もだ。来週の日曜の予定を話しているのである。それに、これはもう、私と夫が生きて行くための食べ物の話をしているのである。これ以上立派で大事な話はないと思うのだが…。
ところがである。私のこと大事な話の最中に、2、3分経つあたりから、夫はもぞもぞとし始め、5分と経たないうちに、「トイレに行って来る」と言って、決まって席を立つのである。そして、その話は自然と立ち消えになってしまうのだ。
私の話と夫のトイレ行きがどう結びつくのか解らないが、私の話が夫の尿意に自然に反射してしまうらしい。
面白い現象である。これが一回だけならともかく、毎回必ずとなっているのだから、小保方ちゃんの「STAP細胞の存在」どころではなく不思議であり、研究の価値がある。これを分析して解明できたら、これこそノーベル賞ものである。
私達夫婦の会話を(一方的に私が話しているのであるが…)何十本も5分ずつビデオ撮りにして、一つ一つ「裏付け」して行くのである。夫を私が嘘をついているように思われてはノーベル賞ものにならないので、きちんとした医学的な証明をする必要があろう。
そこで、近日中に、夫を一緒に医療機関を訪ねようと思うのだが、その大事な話が終わる前に、夫はきっと「トイレ」と言って席を立つに違いない。
