隣の青芝

2013年8月31日 0 投稿者: seiko

「隣の芝生は美しい」という諺があるが、隣家の芝生は本当に美しいのだから文句のつけようが無い。お隣は夫婦して庭いじりが好き、草などは一本も生やさず、短いとピンセットで抜くという程の力の入れようであり、その上、ご主人は日曜毎にウォーンと芝刈りだ。そして、これが美男子と来ている。妻に言わせると、隣の芝生は青く見えるのではなく、実際に青いのだ。一言も無い。(少し白髪混じりではあるが・・・。)

わが家は夫婦揃って草取り嫌い。それでも子供が小さかった頃は、妻は三人の子を騙くらかして、「小遣いだぞ」と、百円玉を一枚やって草取りに精を出させていた。が、男の子は中学生あたりから「一抜けた、二抜けた」と余り参加しなくなり、高校まで続いたのは末娘であった。妻は賢いのか狡いのか、掃除も草取りもみな、子供等のいる時を狙うのであった。

斯様にして立派な専業主婦の妻であるから、洗濯はしても選択挟みは晴れて風の無い日は使わず終い、時々風が出て来て飛ばされるというのに、である。要は、面倒くさがり屋の典型なのだ。

その面倒くさがり屋が、ある日突然に、選択挟みを使うように変身した。

これはどうしたことかと思えば、件の隣の青芝男が定年退職となり、庭に出ること頻りになったからであった。

妻は何を思ったのか?初めて見苦しいと自覚したのか、格好をつけようと思ったのか?

お陰様にて、我が家は人並みに選択挟み使用の家となった。隣家の父ちゃんありがとう、かくして我が家は、洗濯物があっちへひらひら、こっちへひらひらとは、さよならすることとなった。

隣の芝生は今日も青く、朝日に燦然と輝いている。