真の優しさ
またまた病気の話である。
何、病気という程のことでもないが、いつも行く個人医院での血液検査の結果のことである。糖尿のところに赤い線があり、AICが6.4だというのだ。これが誉めた数字か悪い数字か知らないが、医者は「むにゃむにゃ・・・。これは気を付ければ大丈夫ですから。今日はいつもの降圧剤を出しておきましょう。」と言う。何が大丈夫なのか解らないまま帰宅。
いつものごとく妻が待ち構えていて、
「どうだった?」
「何でもないって。でも血糖がどうのこうの話していたなあ。」
「何でもない病気の話をする訳がないでしょう。関係があるから話するのよ。」
尤もな話である。流石に私の妻は読みが深い。
「要するに糖尿病の入口だから、注意しなさいっていうことよ。」
妻は結論付けて、
「貴方はジムに行くような人ではないが、運動は通勤があるから大目に見て、ちょっとカロリーを落しましょ。」と言うのだからショックだ。食いしん坊の私にはもう生きている意味がないではないか。明日からどうなるのだろうと珍しく不安で眠れないい夜を過ごした。
そうして一週間経ち、二週間経ち、矢張り品数も割に多く、今までとあまり変わらないように思うのだが…。
暫くして妻は、
「働いて帰ってきて楽しみの食事を減らされては可哀相だ。」と言うのだ。
翌々日、AICが6.8になっていた。入口どころか、糖尿病へまっしぐらだ。
食事を減らすのが優しい妻なのか、沢山食わせてくれるのが優しい妻なのか、はた又考え込んでしまう夕餉時である。
